カテーテル治療(PCI:経皮的冠動脈形成術)大事故と隠蔽【未解決事件簿4】

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B 大事故による大出血・心タンポナーデを放置
C 治療法がないと嘘をつき看取らせようとした
D 急性硬膜下血腫の原因の頭部打撲を隠蔽
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 病院内での出来事・事件
 

前回はこの未解決事件のうち、病院内での出来事のうち、特に重要な問題点を5つに分け、 その概要を示しました。

この事件のそもそもの発端となったのが、搬送直後に行われたPCI(冠動脈カテーテルインターベンション)での 大事故でした。医師らは「無事成功した」と嘘をつき、大事故を隠蔽し、当初は僕たちもそれを信じてしまいましたが、 その後、父の状態が急激に悪化し危篤状態に陥ったという経過が合わないことから、疑いの目を持つようになりました。 最終的に「大事故」があったことが判明したのは、「証拠保全」手続きで医療記録を入手し、独自に分析した後のことでした。

ここでは、PCI終了後の医師からの説明内容と、上記の分析・検証結果とを 対比させながら、説明したいと思います。いかに医師説明内容に嘘が多く、事実が隠されているかがよく分かります。

この「医療記録」を入手する際の手続きであった「証拠保全」を受任した「弁護士」は 後に「成りすまし」であることが判明しており、この「証拠保全」自体にどれほどの法的効力があるのか、 言い換えればこの「証拠保全」手続きで入手した医療記録に、どれほどの法的有効性があるのかは分かりません。

一部、特に大動脈の穿孔という大事故の前後の画像が一部抜き取られている疑いが強いのですが、 それでも、この時に起こった事実を再構成することは 可能でした。

 PCI(カテーテル治療)前後の事実経過・医師説明内容
 

2010年8月24日、夕食後の午後8時頃、父親は左前胸部痛、嘔気を訴え、冷汗が出現していました。 高血圧で内服中で、軽度の糖尿病(HbA1c 6.5%前後)があり、この時の症状からは急性心筋梗塞ではないかと考え、 救急車を呼びました。

夜、遅い時間であったため、受け入れ医療機関探しに難航し、何とか受け入れてもらえる病院が見つかりました。 それが、今回事件が起こるX病院でした。

搬送後、心電図の前胸部誘導で明らかなST上昇が認められ、僕の見立て通り、急性心筋梗塞の診断で、 緊急PCI(カテーテル治療:冠動脈インターベンション)が行われることになりました。

後に取り寄せた医療記録を見ると、開始が午後10時30分過ぎ、終了が翌8月25日午前1時00分頃となっており、 約2時間30分かかったことになります。

X病院・循環器内科病棟のナースステーション、CCU(コロナリー・ケア・ユニット)病室の前にある待合室で 母と僕の2人で待っていると、父親を乗せたストレッチャーを3〜4人で押して、うつむいてCCUに入っていきました。 後から考えれば、まるでお陀仏となった仏様を運んでいるような雰囲気でした。 その中の1人、I医師が出てきて僕たちに近づき、 「時間かかっちゃいました〜」と言って、疲れた様子でテーブルに手を突き、「無事終了しました。でもかなり重症なので、 厳しいかもしれません」とも言いました。

しばらくしてナースステーションの脇を通り、奥から説明室に案内されて、そこで説明を受けました。 「心筋梗塞でした。CKもトロポニンも上昇していて、詰まった部分は左前下行枝と言って、心臓にある冠動脈の 一番太い大事な血管が根元から詰まっていました。血流を再開して血管をバルーンで広げてステントを留置して 治療は終了しました」と言い、実際の冠動脈造影の動画を提示して説明していました。

「ただ詰まった血管が非常に大事な血管で、そこが根元から詰まっていたので、 かなり重症にはなってしまいます。この後、CKなども徐々に上がってくると思いますし、 この後の経過は厳しいかもしれません」という説明でした。

この時点で、PCIの手技ミス、事故の説明は全くありませんでした。

その後、治療後の父と話すためにしばらく待合室で待っていましたが、なかなか呼ばれないため、 ナースステーション脇のドアからCCUをのぞき込もうとすると、1人の看護師が「ダメです! ご家族は入ってきちゃダメーーー!!」とものすごい叫び声で阻止しました。 「いや、なかなか呼ばれないものですから、まだなのかな、と思いまして」と僕は言いました。 「とにかく勝手に入っちゃダメです!もう少し待ってください」とその看護師さんに阻止されました。 後から考えると、これもおかしな話でした。

しばらくして、入室の許可が下りました。父の状態は特に変わったところはなく状態は落ち着いているように見えました。 「先生たちも時間をかけてよくやってくれた。ここに連れてきてくれてよかった」と言っていました。 「それじゃ、今日は遅いからもう帰るね。また明日来るから」と言って、病室(CCU)を出ました。

帰り際に待合室からナースステーションの奥の方を見ると、先ほどのI医師らが他の医師らと談笑する様子が見えました。 大仕事をやり終えた達成感なのだろうと、母と僕は医師らの談笑する様子をそのように解釈していました。

まさかこの時、父の体にとんでもないことが起こっていたことなど、その時の僕たちには知る由もありませんでした。 後から考えると、あの医師たちは致死的な医療事故を起こした後、あの余裕の笑顔で談笑していたことになるわけですが、 父の死後、かなりの時間が経過してからその事実を知り、僕は怒りで震えあがりました。

 PCI(カテーテル治療)画像と記録から抽出された事実
 

後に「証拠保全」で入手した医療記録の中に、この冠動脈造影検査の動画もあり、その時の看護記録の記載内容を元に この時起こった事実を再構成すると次のようになります。

22時35分:カテ室入室
22時45分:イントロデューサー6Fr、右橈骨動脈から挿入。アプローチできず。
22時55分:右大腿動脈からの挿入に変更。
23時05分:IABP挿入
23時05分:CAG(冠動脈造影)→左前下行枝 #6 100%狭窄、左回旋枝#11、75%程度の狭窄。
23時10分:左冠動脈主幹部完全閉塞。
23時35分:左冠動脈主幹部解離の疑い(CAG画像から)
23時40分:ソルメドロール(ステロイド)投与
24時05分:ステント落下?(心拍出に合わせて、心臓の外で人工物が動く画像あり)
24時40分:左前下行枝・ガイドワイヤーで穿孔:先行した部位からの点状出血あり
24時50分:左冠動脈主幹部完全閉塞(左前下行枝・左回旋枝ともに全く造影されず)。
24時55分:左冠動脈主幹部微弱ながら血流再開。
25時15分:スワンガンツカテーテル挿入。
右橈骨動脈止血と記載(左大腿動脈からアプローチし直したはずだが)。

 PCI(カテーテル治療)画像と記録から抽出された事実の解説
 

上記の時間経過に沿った記載だけでは分かりにくい部分が多いと思いますので、 ここからはこの記載の具体的内容をかみ砕いて説明したいと思います。

このPCIという治療では体表の橈骨動脈(よく皆さんが脈をとる手首の脈を触れる動脈です)または大腿動脈(大腿の付け根の股の部分にある 動脈です)に局所麻酔をして、そこから金属製の細いガイドワイヤーを挿入し、ガイドワイヤーの先端の位置をX線透視で 確認しながら、大動脈を経て心臓の周囲にある「冠動脈」に入れていきます。 そのガイドワイヤーに沿ってカテーテルを入れていき、心臓の冠動脈内で狭窄または閉塞した血管をバルーンで押し広げて、 そこにステントを留置し冠動脈の狭窄または閉塞が解除されて再開通し血流が十分に戻ったことを確認して終了となります。 この治療は通常は1時間から1時間半ほどで終了します。

医療記録を見ると、最初は右手首の橈骨動脈からガイドワイヤーを挿入したが冠動脈に上手く入らず、 大腿動脈から入れ直したという事実が分かります。

そして右大腿動脈からガイドワイヤーの挿入を開始し、その10分後、何とIABP(大動脈内バルーンパンピング)が挿入されて いるという記載があります。これには驚いて肝をつぶしました。 IABPというのは大動脈内にバルーンを留置し、心拍出に合わせてその動きを補助するもので、 極度に低下した心機能を一時的に補助する際に、主に集中治療室で用いられる特殊な装置です。 これが挿入されたということは、この時点で一大事のイベントが起こったということです。

その後、100%狭窄した左前下行枝の血栓を吸引する際に詰まってしまったのか、その入り口である 左冠動脈主幹部が完全閉塞していました。

ところで心臓の冠動脈というのは、心臓の筋肉に酸素や栄養を送る血管で、右冠動脈、左前下行枝、左回旋枝の 3本があり、左冠動脈主幹部というのは、左前下行枝と左回旋枝に分岐する前の根元の血管です。 左冠動脈主幹部が閉塞してしまうと、その先の左前下行枝と左回旋枝はともに遮断されてしまい、 その部分の心筋はやがて壊死してしまうため、これは一大事です。

その後、ステントのような人工物が心臓外の部分に落下して浮遊し、心収縮に合わせて動く様子が映し出されています。

また左前下行枝に挿入したガイドワイヤーが穿孔して血管外に突き出ており、その部分から点状出血と思われる造影が認められました。

このPCI治療は当初、右橈骨動脈からアプローチしようとして失敗し、右大腿動脈からのアプローチに変更した という記載がありますが、最後は「右橈骨動脈を止血し終了」という記載があり、虚偽記載の可能性があります。

また前ページの「5つの問題点」の問題点1でも説明しましたが、父が死亡する9月12日に撮影されたCTで大動脈から 左胸腔に流出するようにつながる「胸水」が認められ、大動脈からの出血であった可能性が高いと考えました。 大動脈解離などはなさそうですので、これは「医原性」つまり「医療事故」によるものと考えるのが妥当です。

その他、大動脈から左胸腔・縦郭への出血を示唆する所見として、医療記録では以下のものがありました。

・カテーテルの先端に近い部位から造影剤がジェット状に噴出
・9月12日の胸部CTで上行大動脈周囲に三日月状の血腫像あり
・レントゲンで上縦郭の著明な拡大あり
・レントゲンで肺野の透過性が著しく低下
・気管が右側に著明に偏位

大動脈は圧が高いですので、この「穿孔」を放置すれば胸腔内はやがて「血の海」になり、 肺や心臓を圧迫して呼吸不全や拘束性ショックを来たし、死に至ります。治療法は外科的手術の一択です。

このように、PCIの画像所見からは、このPCIでは大事故クラスの手技ミスが多発しており、大失敗であったことが分かりました。

 PCI(カテーテル治療)の大事故について医師からの説明なくリカバーなし
 

PCIが終了した後、医師からは「時間はかかってしまったが最終的に閉塞部位を再開通させ、そこにステントを留置して、 無事終了した。ただ閉塞していた血管(左前下行枝)は最も重要な血管で、そこが根元から詰まっていたため、 この後の経過は厳しいかもしれない」という説明がありましたが、 上で述べたようなPCIの手技ミス、左冠動脈主幹部狭窄、IABP(大動脈内バルーンパンピング)、 左前下行枝のガイドワイヤーによる穿孔、心臓外への人工物の落下、大動脈穿孔・血胸などについては、 一切説明がありませんでした。 このことから、医師らは初めからこの事故を隠蔽する方針であったことが分かります。

当然のことですが、これらの大事故を放置すれば、父の状態はこの後、急激に悪化して最終的には死に至ることは その必然的帰結と考えられ、当然、医師らはそのことを 知っていたはずです。

医師がこの大事故を隠さず、この時に起こった事実をこの時点で説明してくれて、 これをリカバーする方法として手術があるという趣旨の説明をしてくれて、 その手配をしてくれていれば、それによって一命をとりとめることができた可能性が高いのですが、 医師らはそのことを説明せず、その当然の帰結として、父の容体は最終的に悪化し、回復不能の状態に陥りました。

僕たちはこれらの医療事故については何も知らされず、 「PCIが成功したのだから、この後は必ず回復するはずだ」と信じて、毎日見舞いに行っていました。 父も僕たち家族も、医師らに完全に騙されていたということです。

この後、父の状態は急激に悪化、血圧低下、頻脈が進行し、この大事故から2日後に危篤状態に陥りました。

次回は問題点2として、危篤状態に陥った際の医師の説明内容と、後の僕自身の分析・検証結果を詳しく説明します。

次は問題点2:重大事故放置により重度のショック・危篤状態に陥る【未解決事件簿5】へ。

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